車両工作
横浜市電500型の走行する模型を作る
フルスクラッチ
といっていいのかな?

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後日談1:2台目改良型を作る  後日談2:電停のminiジオラマ  後日談3:3台目塗色を変えて
後日談4:4台目旧塗色にて  これまで作成した500型集合!



以前市電保存館を訪れて以来、すっかりファンになってしまった横浜の市電。
中でもコンパクトな二軸台車の500型がお気に入りです。

この横浜市電500型。かつてワールド工芸さんからキットと完成品が販売されていたようですが、
今となっては手に入れることは至難の業。金に糸目をつけなければ別ですが、私にはちょっと無理なようです。
ということで、何とか自分で作れないものか思案しているときにKATOさんのチビ電・路面電車を手に入れました。
パンタグラフが折れた傷だらけのジャンク品でしたので、いつものように気兼ねなく私の役に立ってもらうことにしました。


初の車輌フルスクラッチの素材は、扱いやすいが耐久性に乏しい”紙”であります。
しかし、”紙”が案外馬鹿に出来ないところを、この工作でお見せできれば幸いです。



まずは市電保存館で横浜市電500型を実測です。
レール幅は1372mm、全長9144mm、全幅2438mmなどに始まり、窓枠の大きさなど各部を採寸してきました。


幸いなことにゲージ幅はほぼ1/150ですので、スケールも1/150で作成することに決定。
これにあわせてベースとなる厚紙(2mm厚)を数枚切り抜き、これを基準として作ることとしました。


パソコンのお絵かきソフトを利用して作図し、プリンターで打ち出したものがこれ(↓)です。
これを片面について最低三枚打ち出しておきます。素材はごく普通の上質紙です。


1番が裏側に当り、3番が表側に当ります。2番を間に挟むようにこの三枚を貼り合わせます。


妻面も同様に貼り合せると、あら不思議!?ちゃんと窓枠のモールドが出来ています。


これを箱にするべく、裏打ちしながら貼り合せていきます。




妻面のアールを付ける為に基準となる厚紙を挟んで仮に固定します。


形が付いて来たら、屋根を接着します。ところどころ着きにくい所や脆い所は瞬間接着剤の出番です。
屋根は先程切り出した厚紙の基準紙の内の一枚です。


2mm程の紙の帯を車体にまとわせて、窓下などにモールを追加しました。
どうでしょうか?なんとなく車輌っぽくなってきたでしょう。


これは車体から屋根に続くモールドを作っているところ。1mm厚紙の積層です。

お菓子のミルフィーユを作っている気になります(笑)。

車体の工作はここでいったん終了です。

シワがよってしまいますので、よく乾燥させないといけません。



車体を乾燥させている間に、屋根パーツの作成です。
屋根のアールを出すのは本当に難しいのですが・・・。
ここは難しく考えず、先程の基準となる厚紙をそのまま利用しました。
屋根の丸みを出すべく、400番の紙やすりで屋根の厚紙を削っているところです。


さらに路面電車の命とも言うべきパンタグラフを0.45mmと0.3mmの銅線、それと瞬着で一所懸命に作ってみました。
これは市電保存館の実物のパンタグラフです。もちろん採寸してきました。


左の木が爪楊枝の先です。根気と集中力のいる細かな作業です。
最初は足(根元)を外側に折り曲げましたが、最終的には内側に変更してあります。


作ったパンタを屋根に装着するために、一段モールドを作った上に穴を開けました。


針金で根元を押さえ、その他のモールドも実写を参考に作ってみました。
もちろんパンタグラフは前後に動きます。
本当は細い糸を両側にまわして、パンタグラフを好きな方向へ倒すようにもしたかったのです。
その糸を取り回すための屋根上のモールドなのですが、普通の木綿糸では太くてダメです。
模型用の細い糸を今度どこかで調達してこようと思っております。


ボディーに屋根を仮に置いてみました。だんだんイメージに近づいて来ているようです。


サーフェイサーを吹いてみました。そろそろ塗装の準備です。


ヘッドライトと尾灯のモールドを追加しました。
当初、適当な素材がなく悩んでいましたが、2mmと1.5mmのつぶし玉というものを妻からもらいました。
ピンバイスで下穴を開け、これらのつぶし玉を半分埋めた形で接着しました。意外といい感じです。


側面中央窓下にもサボ受けの金属パーツを取付けてみました。

言われなければ、ほとんど気がつきませんが(笑)。



さて、いよいよ塗装です。
素材が紙なので、アクリル絵の具を使うかプラカラーを使うかで迷いましたが、
水を使うと紙がへにゃる可能性があるので、最終的にはプラカラーを選択しました。
写真は室内にレッドブラウンを塗装しているところです。


屋根および配管、パンタグラフはねずみ色1号にて塗色。


昭和三年製500型の往時の写真です。まだトロリーポール仕様の頃です。


ちょっとレトロな雰囲気の上の500型をイメージした塗装にしました。
外装色は白に近いクリーム色をベースに明るめの青を配色。建具類は室内と同じレッドブラウンで。

だいぶ出来てきました。
このあと半つやを屋根を除く全体に吹いてから、窓ガラスの表現として透明プラ板を取付けました。
プラ板を入れるとボディーの補強にもなりますし、光の反射のせいかより実感が出てくる気がします。



いよいよ動力の加工です。そのままではちょっと長いチビ電の両端を切り落としました。

これだけです(笑)。

さて、試運転。
快調です!チビ電動力の頼りのない足取りが、路面電車らしく感じられます。

でも何かもの物足りない気がします。

前面下の巻き込み防止の柵(スノープロウのようなもの)がないので、またまた針金工作です。


上の部品を装着すると、こんな感じです。

ちょっと良い感じ。



フルスクラッチと呼べばいいのか、はたまたペーパークラフトと呼ぶべきか。
側面窓外側の手摺や台車の表現などがまだまだですが、とりあえず完成とします。


台車と窓素材を除けば、100%紙と針金でできたエコ(?)な路面電車です(笑)。


今回の率直な感想として、紙は扱い易かったので工作は比較的簡単でした。
しかし、塗装は難しかったです。表面が毛羽立つので、マスキングも出来ませんし。
次回があれば、プラペーパーなどでチャレンジしてみるのも良いかと思いました。

我が家の古いプリンターでもこんな感じに出来ますので、
今時のプリンターならば、最初から色付きでパーツを組み上げられるかもしれませんね。



後日談1

チビ電の台車(T車)がもう一台余っているので、前回の教訓を踏まえ、今回は工程を改良して作ってみました。

前回は妻面と側面を別々のパーツにして印刷していましたが、今回はL字になるように印刷しました。
また、パーツを切り出す前の台紙の段階で、先に窓などを慎重に切り抜いていきました。
※切り出した後に切り抜こうとすると、ピラーの部分が攣れてしまったりします
これだけのことですが、切り出しの精度は上がったと思います。
窓を切り抜いている最中は、さながら写経でもやっているような集中力を発揮です(笑)。


屋根の作成は前回と同じですが、より屋根の丸みが出るようにヤスリがけを頑張りました。


また、屋根と本体を繋ぐパーツを別個に作成し、塗装の時に楽を出来るように配慮しました。


仮組み(↓)です。細かなことに気を配っただけですが、前回よりも精度が上がった気がします。


前回同様の配色です。今回は塗装の下地のサーフェイサーを吹きませんでした。
ライト類は1.5mmと2mmのつぶし玉を引き続き利用しました。


窓枠やヘッドライト、尾灯などにも色を入れました。
別パーツ化したお陰で屋根下のラインの塗り分けが前回よりも良い感じです。


前回の動力台車を利用しての試運転です。快調、快調!


相変わらずの針金工作ですが、排障機は下の写真のように立体的な感じに作り変えました。


取付けるとこんな感じです。


ガラスも前回よりも薄い透明プラ板を利用しました。特に前面のフィット感が向上しました。


そんなこんなで我が家の2代目横浜市電500型の完成です。


↓右が前回作ったプロトタイプ、左が今回作成した2代目です。
塗装が若干違いますが、基本的な構造は一緒です。
それでも両者に精度を含めた違いがあるのは、試行錯誤の跡があるかないかです。


次回は一般的な横浜市電カラー(肌色っぽいボディーに青いライン)で作ってみようかと思っています。
ただ、もうチビ電の台車がないので、当分は作ってもボディーの着せ替えですが。

その前に、電停をイメージしたminiジオラマを作ろうかなぁ。
私の中でイメージがどんどん膨らんでいきます(笑)。



後日談2

その後、とある電停をイメージしたminiジオラマを作ってみました。


はがき1枚と同じ程度のジオラマですが、小さな市電と馴染んでいる気がします。




後日談3

その後、一般的な昭和40年代の横浜市電カラー(肌色っぽい)ボディーを作りました。
今回は単色ボディなので、今までよりも若干厚めの用紙を利用し、よりモールドが立つように試みました。

前回の旧カラーとは異なり、薄茶色ボディーにスカイブルーのラインが入ったバージョンです。
最晩年のタイプなので、側面窓に保護棒を加え、手書きですが車体番号も入れてみました。

初めて作った500型バージョンから動力を譲り受け、試運転です。

相変わらずチビ電の動力は良い感じで走ってくれます。

「とある電停」miniジオラマにて記念撮影。


市電保存館でもお馴染みのカラーリングで、今の横浜市バスにも継承されているカラーリングです。


これからも時間があればちょっとずつ作って、こつこつと完成度を上げていくかもしれません(笑)。



後日談4 (2010/3)

その後、戦後〜昭和30年代に一般的であったクリームと青のツートンカラーで1台作成しました。
工程は以前のバージョンと全く変わらないです。ただ、紙の切り出し時に集中力を失わないことに努めました。
また、屋根板により曲線が出るように気合を入れてやすり、屋根下の造りも高さが出過ぎないように変えてみました。


ヒューゲルパンタグラフの銅線を半田で接合し、オール金属化(そんな大それたものではない・笑)しました。


屋上の配線も一段細い銅線を使用してみましたので、以前のバージョンよりも少し細密になったような気がします。


ヘッドライトも2.0mmから1.5mmのつぶし玉へ変更。


白に近いクリームと青15号よりも明るめの青を選択し、エアーブラシで塗装中です。


大まかに出来上がりました。


いつもは手書きの車体番号に今回はインレタを使ってみました。
半つやのトップコートで保護し、サボ受けやガラスを取り付けてボディーの工作終了です。


既存の下回りと合体して、横浜市電500型502号車の完成!


以前作ったコンパクトなジオラマで記念撮影!時代設定は新旧塗色が混在する昭和30年代後半かな?






これまで作ってきた横浜市電500型を一堂に集めてみました。
↑記念すべき初工作の試作1号機 ↑試作1号機を踏まえた戦前塗装の512号機
↑前回作成した昭和40年代塗色の511号機 ↑今回作成した戦後〜昭和30年代塗色の502号機

少しずつ完成度は上がっているように見えますでしょうか?

改めてこのように見返してみると、
「無意識に結構改良しているんだな・・・」
と手前味噌ながら思います。


↑500型ではありませんが、横浜市電無蓋貨車10号

横浜市電の塗色もこのように色々な変遷が見受けられます。

書籍によると、戦前塗装には緑にオレンジ帯といった塗色もあったそうですが、
残念ながら、残っている資料は白黒写真ばかりなのでどんな色なのかが分かりません。
もしご存知の方がいらっしゃいましたら、こっそりお教えくださいますと嬉しいです。

気合と時間と集中力が許せば、精度を上げながらコツコツ作ろうと思います。



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