車両工作
静岡鉄道・電動貨車デワ1の走行する模型を作る
1/120(TT9) フルスクラッチ

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今年(2009年)5月の静岡ホビーショーに行った際、偶然訪れた静岡鉄道・長沼車庫での『車両工場・デワ1号見学会』。
思いがけず触れ合うことの出来たのがこの愛らしい(?)電動貨車デワ1号でした。


なんと昭和を飛び越えた大正15年生まれの木製電動有蓋貨車で、
清水港より輸出されるお茶の輸送や、逆に清水から静岡への石炭の輸送に活躍していたそうです。

風聞するところによると「シーラカンス級」の貴重な存在とのこと。
この名車を作成したいと数ヶ月構想を練っていたのですが、どうもNサイズ(1/150)で作るには小さいようです。

デワ1の寸法です。
現物
1/1
Nサイズ
1/150
全長 7.722m 約 5.1cm
全幅 2.172m 約 1.3cm
全高 3.793m 約 2.5cm
軌道幅 1.067m 約 7.1cm
(個人調べにつき正しいとは限りません)

仮に小さなボディーで組んだとしても、9mmゲージでは現物よりも軌道幅が広がってしまいますので、
なんとなく二の足を踏んでおりました。

そんな時に手にいれたのがKATOさんのチビ客車用動力ユニット(11-104)でした。

小さな動力でおあつらえ向きに連結面のバッファー緩衝機も備えています。
ただ、全長がそれでも約6.5cmありますので、1/150のNゲージサイズにこだわると少々厳しいものがあります。

そこで、先程のレール幅の矛盾と、動力ユニットのサイズ的な矛盾を解決するべく、
スケールサイズをレール幅に合わせて考えた1/120にして計算しなおしてみました。
すると・・・、
現物
1/1
1/120 11-104
動力
全長 7.722m 約 6.4cm 約 6.5cm
全幅 2.172m 約 1.8cm -
全高 3.793m 約 3.2cm -
軌道幅 1.067m 約 8.9cm 9.0cm
どうやら計算がうまくあってきました。

こうして、今回は1/120スケールで車輌の製作をすることにしました。
後から知ったことなのですが、この1/120スケールで9mmゲージのことをTT9(ティー・ティー・ナイン)と呼ぶそうです。
鉄道模型暦の浅い私はTT9という規格を知らなかったのですが、元々ヨーロッパで存在したTTゲージスケール(縮尺がおよそ1/120)と、
日本の標準的な軌間(1067mm)を1/120(=およそ8.9mm)で融合させて、既存のNゲージ線路を流用するというなかなか都合の良い規格です。

それでは、Let's工作!



車体の作成

まず、寸法に合わせた屋根板の切り出しです。今回も横浜市電同様素材は紙です。



次に車体の作成です。動力ユニットを囲うように紙工作。


でも寸法上、一部は欠き切らないといけません。


寸法合わせをした屋根とボディーを接合。



板張りボディーを表現するため、ミイラ男のようになってもらいます。



妻面の作成は横浜市電同様、切り出した紙の積層です。



縦罫などのモールドを足して、貨車の開口部を切り抜きます。



針金などを利用して、荷室の扉が稼動するようにしました。


とりあえずこんな感じで大まかなボディーが出来上がりました。



屋根の作成

いつもは屋根面の素材には厚紙を利用するのですが、今回は2mm厚の発泡スチロール板を利用しました。
車輌を妻面から見たときに、横浜市電の屋根はかまぼこ型に見えるのですが、デワ1は山型に見えたためです。
本当にどうなのかは定かではないのですが、ここは自分の感性を信じてこの形でいこうと思います。


かまぼこ型に比べて山型はこのように削る部分が多いので、発泡スチロール板を利用することになった次第です。


実は今回の最大の難点であったのがパンタグラフでした。
1/120のパンタの入手方法を私は知りませんし、高価になることは貧乏工作家としてのポリシーに反します(笑)。
したがって、集電舟の刺が折れていたジャンクなNゲージ用パンタグラフ(確かPS101CN)に手を加えて利用しました。



トロリーロープ(っていうのかしら)の取り回し用金具を銅線で追加。



パンタからボディーへの集電用の配線も勝手(笑)に作りました。


屋根周りの出来上がりです。



足回りの作成

先程の話の通り、今回の工作に最適なKATOさんのチビ客車用動力ユニット(11-104)


まず、不要な柵の切り離し。当然のごとく、これで後戻りは出来なくなりました(笑)。



乗務員ステップも位置が悪いので、切り離しました。



新たに乗務員ステップを銅線にて新設し、デワ1特有のバッファー間の連結器を工作。


本物の連結部は、鎖がフックの根元で固定されています。まぁ雰囲気ということで。



仮組みと細かなディティールの追加

屋根とボディーを仮組みし、各部に銅線にて手摺やフックを作成。

テールライトは1.5mmのつぶし玉。ヘッドライトが妻楊枝の頭なのは内緒(笑)。

トロリーロープをイメージして糸を通してみました。


屋根&ボディーと足回りを仮組みです。


特に不都合なく整合しました。

なんとなくですが、雰囲気は出てきているようです。



塗装

さて、塗装ですが、その前に手摺やパンタグラフなどの金属部分にメタルプライマーを塗っておきました。


屋根は発泡スチロールですので、油性系の塗料は使えません。


全体をつや消しで塗装しました。

良い感じになってきました。



試運転

さぁ、大切な試運転。別段問題もなく極めて快調です!

でも、既存のNゲージ車輌と比べるとやはり大きいです。




完成

運転台ガラスやマスコン、テールランプ、書き文字などを加えました。


似たアングルで撮ってみました。



書き文字は妻の協力を仰ぎ、白のロットリングでそれらしく。



個人的には、荷室扉の開閉ができることにご満悦(笑)です。


静岡鉄道デワ1、それらしい雰囲気になりました。




蛇足?

パステルで汚しをかけてみました。



屋根と足回りは茶系で鉄錆の感じを。



ボディーは灰色系で経年を意識してエージング。



”デワ1はこんなに汚れていません”と大切に保存されている静鉄の職員さんに怒られてしまいそうです。



今回もまた、動力以外は格安の貧乏工作の紹介でしたが、楽しんでいただけたでしょうか。
静岡鉄道のデワ1を見る機会がありましたら、どうぞこの記事を思い出してやってください。




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