メジャーリーグ本塁打争い

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 十数年前、大リーグからホーナーという外国人選手がヤクルトにやってきた。詳しい成績などは覚えていないのだが、彼のバッティングを見る限り、日本の野球とアメリカのベースボ−ルとの差は、かくも歴然たるものかとがっかりしたのをおぼえている。

 しかし近年では、阪神タイガースでそこそこの活躍をしていたフィルダー内野手が、帰国後いきなりメジャーリーグで本塁打王になったり、野茂をはじめとする日本人投手の活躍があったりで、「メジャー何するものぞ」という感覚を禁じえないものがあった。
 まして日本のプロ野球を自由契約になった選手(投手)が、中継ぎとは言えメジャーリーグのマウンドに立っているのを見るにつけ、「メジャーもレベルが下がったなぁ」と少し寂しい気持ちになっていた。そしてオリックスのイチローやベイスターズの佐々木がメジャーリーガー達を相手に活躍することは全く可能であると思うようになっていた。

 野球通ならばご存知のことと思うが、メジャーリーグはここ数年来その人気を失っていた。長期にわたったストライキが観客の足をスタジアムから遠ざけたのだ。しかし今年、そのメジャーリーグを熱く燃やす出来事が起こり、スタジアムに大歓声が蘇った。
 そのきっかけは、すでに今年の6月から始まっていた。
・6月25日には、マグワイヤーはすでに34号を放っており、ソーサは月間本塁打18本を記録し、メジャー記録に並んでいた。
・7月27日には、マグワイヤーは1シーズンの本塁打球団記録を破る44号を放ち、マリスが61年にマークした61本の大リーグ記録が取り沙汰されるようになった。一方ソーサはというと、38号で止まっており、この時点で6本差。グリフィーにも負けていた。誰もがマグワイヤーの一人旅だと思っていた。
・しかし8月上旬のソーサの追撃は凄まじく、8月11日にはついに46号でマグワイヤーに並んでしまった。マスコミ報道が激しくなってきたのもこの頃からであった。ソーサは語っている。「マグワイアが記録を破る。何が起きようと、そう言い続けても良い。彼は私のアイドルだ」と尊敬の念を表していた。
・グリフィーのペースが遅れだし、ここからしばらく両者のデッドヒートが続く。マグワイヤーが打てば、ソーサも打つ。
・8月21日。マグワイヤーが50号を放ち、3年連続50号以上という偉業を達成した。彼は96年に52本、97年に58本をマークしており、ベーブ・ルースをしても達成できなかった偉業を打ち立てた。
・8月31日。マグワイヤー55号、ソーサ54号。
・9月 1日。マグワーヤー55号、ソーサ55号。
・9月 2日。マグワイヤー57号、ソーサ55号。
・9月 3日。マグワイヤー59号、ソーサ56号。
ベーブルースの記録に並ぶ。
・9月 6日。マグワイヤー60号、ソーサ58号。
追い越す。ついにマリスの記録に並ぶ。
・9月 8日。マグワイヤー61号、ソーサ58号。
そしてあっさりと、
・9月 9日。マグワイヤー62号、ソーサ58号。
抜き去っていった。
 この時点で誰しもが本塁打王はマグワイヤーであると確信したと思う。ソーサの集中力が切れるであろうと思った。しかし、ここからがソーサの凄いところである。
・9月14日には62号を放ち、マグワイヤーに並んだ。ここからは前人未到の争いである。
・9月16日。マグワイヤー63号を放つ。
・9月17日。ソーサ63号で追いつく。
・9月19日。マグワイヤー64号を放つ
・9月21日。マグワイヤー65号で引き離す。
・9月24日。ソーサ連発で再び追いつく。
・9月26日。ソーサ66号を放ち、一時的にリードするが、すぐさまマグワイヤーが66号を放つ。 一歩も譲らぬ争いである。しかし最終的には、ソーサが尊敬するマグワイヤーが上であった。ラストスパートとでも形容できそうな最後の力を振り絞ったマグワイヤーが、4本を連発し、死闘に幕が下ろされた。
 最終的にはマグワイヤーが70本、ソーサが66本であったが、これは数字以上に僅差である。
 果たして、この記録はマグワイヤー一人で達成できたものか? もちろん、マグワイヤーには60本以上の本塁打を打つだけの潜在能力があったことは、ここ数年の記録が示すとおりであり、実力である。
 しかし61号のマリスの記録を9本も超え、70本という前人未到の大台に乗せる事ができたのは、最後の最後まで集中力と緊張感を持てる環境にあったことが大きく起因すると思う。そう言う意味において、マグワイヤーとソーサのめぐりあわせには運命めいたことを感じずにはいられず、両者にとって幸運であったと思う。
 人間の能力を最大限に生かすためにはTPOが肝心なのだと改めて感じ入っている。
 ソーサは今年こそ負けたものの、マグワイヤーにはない若さがある。その爆発力と集中力には目を見張るものがある。これから数年間、この二人がメジャーリーグを沸かせることであろう。

 ここで、つまらない計算をしてみた。
 メジャーは、162試合で70本。日本のプロ野球では、135試合で何本にあたるのか?
 162:70=135:X  ⇒ 162X=9450 ⇒ X=58.333・・・
ということで、日本のプロ野球に換算すると約58本なのだ。
 日本の本塁打記録は、王貞治の55本(135試合時)・R.バースの54本(130試合時)である。
 では、メジャー162試合で61本で換算すると、
 162:61=135:X  ⇒ 162X=8235 ⇒ X=50.833・・・ 
である。約51本であれば、全盛期の落合もクリアした数字である。

 単純にメージャーリーグとプロ野球を比較することはできないが、プロ野球選手にもがんばってほしいものである。 そして、何年かぶりに「メージャーって凄いなぁ!」と思わせていただいた両者に感謝の念を覚える。

 最後にくだらない計算をもうひとつ。
 現在(98/9/28・131試合消化時点)、セ・リーグの本塁打王の巨人松井の33本は、
 162:X =131:33 ⇒ 131X=5346 ⇒ X=・・・。 
・・・いやいや、やめておきましょう。
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